「正動作」「逆動作」とはPID制御における制御の動作方向のことです。PID調節計を使用する場合「正動作」「逆動作」を選択する必要があります。
PID制御の出力の動き方
正動作
SVに対してPVが増加すると制御出力MVが増加する。
⇔PVが減少するとMVが減少する。
逆動作
SVに対してPVが増加すると制御出力MVが減少する。
⇔PVが減少するとMVが増加する。
代表的な制御
加熱制御:逆動作
冷却制御:正動作
流量制御:逆動作
レベル制御:タンク流入側に弁がある場合は逆動作、タンク流出側に弁がある場合は正動作
※上記は逆作動弁と組み合わせたときの例です。逆作動弁の意味は後述します。
正動作、逆動作の例
以下の図のような流量制御を例として考えてみます。ここで SV = 100 m3/h, PV = 100 m3/h だったとしましょう。その状態から、なんらかの理由によりPVが 120 m3/h に増加したとします。調節弁は流量を抑えるために開度を小さくする方向に動作します。逆に 80 m3/h に減った場合は、目標値100 m3/h となるように調節弁を開ける方向に動作します。これは逆動作です。
次に、冷却制御で考えてみます。冷却制御というのは冷却水の流量をバルブで調節して温度が目標値となるように制御するものです。測定温度(PV)が上昇すると冷却水の量を増やす必要があるので調節弁の開度(MV)は大きくなっていきます。これは正動作です。
レベル制御の場合は2通りの考え方があります。まず、調節弁がタンクの流入側にある場合はPVが大きくなると(レベルが上昇すると)調節弁の開度は小さくなっていきます。これは逆動作です。一方で調節弁がタンクの流出側にある場合は、レベル上昇時(PVが大きくなる)、開度は大きくなっていきます。これは正動作です。
調節弁がタンクの流出側にあるのに間違えて逆動作を選択してしまうと、レベルが上昇すると逆にバルブが閉まってしまいます。このようにPID制御を使用する場合は適切に制御動作を選ばないとうまく動作してくれません。
丸暗記をしなくても「どの調節弁で何を制御するのか?」「調節弁が開く/閉じると制御対象(温度や流量)はどのように変化するのか?」を考えれば正動作を使うべきか逆動作を使うべきかわかると思います。
また、似たような言葉で「正作動」「逆作動」というのもありますが、こちらは調節弁に関する言葉です。逆作動弁=出力信号0%(4mA)で全閉となる調節弁のことです。プロセス制御で調節弁を使用する場合はFail Close (Airless Close)のことが多く大抵は逆作動弁です。以下のページが参考になります。
まとめ
PID調節計を使う場合は、やりたい制御が正動作なのか逆動作なのかまず考えるようにしましょう。調節計の出力が思ったように動かない!反対方向に動く!?ってなったときは大抵この選択を間違えてることが多いです(笑)