差圧式流量計で気体の流量を測定するときの補正について説明します。差圧流量計で流量を測定する場合、温度や圧力が変化するような場所では温度圧力補正が必要となります。なぜなら気体は圧縮性流体だからです。圧縮性流体とは温度と圧力で密度が変化する流体です。ボイル・シャルルの法則により、気体の密度は温度に比例し、圧力に反比例します。そのため、温度と圧力が変化した分だけ補正をしてやる必要があります。(ちなみに液体は非圧縮性流体なので温度圧力補正は通常必要ありません)
温度圧力補正を使用する理由
流量計は設計条件(温度、圧力)を基準に設計されているが、実際の温度、圧力が設計条件と異なる場合は指示値に誤差が生じる。その指示値を補正するために演算を行う。
温度圧力補正演算式(差圧式流量計)
Q1 : 補正後流量 (Nm3/h)
Q0 : 補正前流量 (Nm3/h)
P1 : 実際の圧力 (kPa)
P0 : 設計圧力 (kPa)
T1 : 実際の温度 (℃)
T0 : 設計温度 (℃)
ρ1 : 実際の流体密度 (kg/Nm3)
ρ0 : 設計流体密度 (kg/Nm3)
設計仕様流体(例えば空気)と実際の流体が同じであれば ρ1=ρ0 なので ρ0/ρ1 は無視してOKです。単位がノルマル密度であることに注意してください。ノルマル密度(0℃、1気圧での密度)のため温度圧力は関係ありません。ちなみに空気のノルマル密度は 1.293 kg/Nm3 です。また、補正式にルートが付いている理由は差圧式流量計を使っているためです。
イメージは以下のような感じです。図や上の式では差圧伝送器で開平処理された流量値を使って補正演算をしていますが、差圧伝送器から差圧ΔPの信号をDCSに取り込んで、DCS側で開平演算処理を行う場合もあります。(前者がメジャーかと思われます)
ノルマル質量とは
ノルマル質量について補足します。ノルマル質量とは0℃ (273.15 K)、1気圧 (101.325 kPa abs)における質量のこと。ノルマル流量の換算式は下記の通りです。単位は Nm3/h と書く以外に m3N/h, m3/h(ntp), m3/h(nor) という表記もあります。どれも同じものです。
Q1 : ノルマル流量 (Nm3/h)
Q0 : 実流量 (m3/h)
P : 流体圧力 (kPa)
T : 流体温度 (℃)
温度圧力補正とノルマル換算がごっちゃになる人も時々いますが、温度圧力補正は「設計仕様条件とのズレを補正するもの」、ノルマル換算式は「0℃、1気圧における流量」であると理解してください。
温度圧力補正の計算例
設計仕様:10 kPa, 100 ℃
測定圧力、温度:8 kPa, 120 ℃
差圧式流量計の指示値: 1000 Nm3/h
圧力が低く温度が高いため、補正前指示値に比べて補正後流量は低くなります。
まとめ
差圧式流量計を気体の流量を測定する場合、実際の温度と圧力が設計仕様条件と異なると測定に誤差が生じる。その誤差を補正するために温度圧力補正が必要となる。
蒸気流量の補正については別の記事で説明予定です。