高圧受電設備のCT(変流器)選定

高圧受電設備におけるCTに関連する用語とその選定方法について解説します。

一次電流

CTの一次電流は通常、設備容量(kVA)や契約電力を基に決定されます。設備の最大負荷電流に余裕率をかけた値をCT一次電流の選定の目安とします。

二次電流

CTの二次電流は通常、5Aが選定されます。長距離配線となる特殊な条件においては1Aが使われることもありますが基本は5Aです。

過電流強度(定格耐電流)

過電流強度はCTが大電流に耐えられる強度を示します。定格一次電流の倍数または電流値(kA)・時間(秒)の組み合わせで表されます。

例えば、三菱電機のキュービクル式高圧受電設備用のCTでは、12.5kA/0.125sと12.5kA/0.25sの2種類があります。VCBが3サイクル遮断であれば0.125sのほうを選定すればよいです。短絡電流が流れる時間は下記の通り0.125s未満となるので。

  • OCRの瞬時要素は0.05s
  • VCBの遮断時間は3サイクルなら50Hzでは0.06s、60Hzでは0.05s
  • したがって短絡電流が通電する時間は0.11sまたは0.1s

なお、3サイクルではなく5サイクルの場合は遮断時間が伸びるので0.125sのCTでは不可となります。

過電流定数

過電流定数とは、CTの仕様書に n>10とか n>5とか書いてあるやつです。これは正確には定格過電流定数と言います。定格過電流定数とは定格負担(力率遅れ0.8)においてCTの変流比の誤差が10%になるときの一次電流を定格一次電流で除した値のことです。

CTは飽和特性を持っており、一次側に過大な電流が流れたとき二次側の電流が飽和する特性があります。一次電流と二次電流は変流比に基づく比例関係にありますが、一次電流が過大になると二次電流は飽和していきます。この飽和特性を過電流定数という値で表します。飽和特性は以下のような図で表されます。

例えばCTの変流比が100/5で、過電流定数nが10の場合は、CT一次電流が100×10=1000A以下の範囲では比誤差が10%以内、1000Aを超える範囲では非誤差が10%を超えるというイメージです。ちなみに「JIS C 4620:キュービクル式高圧受電設備」では、n>10を使用することが規程されています。

注意点として、実際の過電流定数はCTの定格過電流定数nの値で一意的に決まるものではなく、CTの二次回路の使用負担によって変わります。実際の過電流定数をn'とすると以下の計算式で表されます。

 過電流定数 n' = 定格過電流定数 n \times \dfrac{ \textrm{CT}定格負担 + 二次漏洩 \textrm{VA}}{使用負担 + 二次漏洩 \textrm{VA}}

この式は、定格負担(VA)に対して使用負担(VA)が小さければ、CTの実際の過電流定数は大きくなることを意味します。例えば、定格過電流定数nが10、定格負担が25VA、使用負担が10VA、二次漏洩が8VAの場合、実質的な過電流定数n'は18になり、定格過電流定数nの倍近いになります。

二次漏洩VAは二次漏洩インピーダンスとCT定格二次電流の2乗をかけた値です。三菱電機の製品カタログに参考値の記載がありますが、二次漏洩VAの値は高圧用であれば 5~10 VA程度です。定格一次電流が大きいCTほど二次漏洩インピーダンスが大きくなります。

定格負担

CTの定格負担とはCTの二次回路で消費される負荷の定格値であり、単位はVAで表されます。高圧受電設備ではCTの定格負担は25VAか10VAが選定されることが多いです。接続する負荷を基づいて適切な定格負担のCTを選定します。

使用負担

使用負担とは、CTの二次回路で消費される皮相電力(VA)の和のことを指します。ここで言う負荷とは、電線・保護継電器・計器のことです。二次回路の電線の導体抵抗と負担(VA)は三菱電機のCTの製品カタログに参考値の記載がありますので参考にしてください。現在使われている静止型OCRの負担VAは4~5VA程度です。昔の誘導円板型OCRでは15~30VAくらいで消費が大きかったのですが今の静止型は消費が小さいです。したがって昔に比べると選定するCTの定格負担も小さめでよくなります。

OCR更新により使用負担が小さくなる際の注意点

VCBが電流引き外し方式の場合、誘導型OCRを静止型に更新する際は注意が必要です。静止型OCRだと二次回路の使用負担が小さくなるので、CTが昔のままでは過電流定数が大きくなります。その結果として短絡時に二次回路を流れる二次電流が過大となってOCRのb接点を損傷するおそれがあります。損傷につながるロジックは以下のとおりです。

  1. 誘導円板型OCRから静止型OCR型に更新した。→CT二次回路の使用負担が小さくなる。
  2. CTは更新せずに既設のまま。→定格過電流定数に対して使用負担が小さい→実質的な過電流定数が大きくなる→一次側に短絡電流が流れた際、二次側に飽和しない過大な電流が流れる。
  3. OCRのb接点に過大な電流が流れる。→b接点が損傷する。

以上のように、CTの定格負担に対して使用負担が非常に小さくなる場合はCTも使用負担に合わせて更新を行うことが推奨されます。もしくはCT二次回路に負担調整器(ダミーの負荷)を追加するのでもよいです。

OCRの瞬時要素を検討する際の注意点

OCRの瞬時要素の整定値検討においてはCTの過電流定数を十分に考慮する必要があります。瞬時要素は以下の関係式に基づいて整定します。

 瞬時要素 \le 過電流定数 n’ \times 定格二次電流

例えばCTの定格二次電流が5Aで、過電流定数が10の場合、瞬時要素は50Aを上限として考える必要があります。上の過電流特性の図を見ればわかると思いますが、過電流定数10だと一次電流が10倍を超えたあたりで二次電流が飽和し始めます。過電流定数10で瞬時要素60Aでは、OCRが動作しない可能性があります。

ただし、ここで言う過電流定数とは、CTの仕様書に書かれている定格過電流定数のことではなく、使用負担を考慮した実質的な過電流定数の値である、という点に注意してください。

参考文献