ボイラーの炉内圧力制御

ボイラーの炉内圧力制御について解説します。

炉内圧力制御とは

炉 (furnace) 内部の圧力を一定にする制御です。燃焼炉を有するプラントでは炉内圧力一定制御を行っています。構成の例を以下に示します。

炉内圧力は炉に流入する流量(燃料、燃焼用空気)と流出する流量(排ガス)のバランスによって決まります。燃焼用空気は押込送風機 (FDF: Forced Draft Fan) によって炉内に送り込まれ、燃焼した排ガスが誘引送風機 (IDF: Induced Draft Fan) によって吸引され煙突へ送られます。炉内圧力制御は一般的に誘引送風機によって行われます。

炉内圧力制御の目標値

炉内圧力は通常、負圧で保たれます。炉内が正圧だと炉の点検口やフランジ部から高温の燃焼ガスが吹き出す危険性があるので炉内は負圧にします。炉内圧力コントローラの目標値SPは負圧の値(大気圧より少し低い値)を設定します。負圧にしすぎると炉外から冷たい空気が炉内に侵入して熱損失が大きくなるので大気圧より少し低い値がミソです。

操作端

炉内圧力は、炉に入る流量炉から出ていく流量のどちらかを調整すれば圧力制御ができます。流入側(燃料と燃焼用空気)の流量はボイラー燃焼制御に使われるため、ほとんどのプラントでは炉内圧力制御は炉外に流出する排ガス流量を調整することによって行います。操作端は誘引送風機入口ダンパもしくは誘引送風機のインバータです。昔は誘引送風機入口ダンパによるダンパ制御が主流でしたが省エネの観点から現在はインバータによる回転数制御が主流です。炉内圧力計で圧力を測定し、目標値に追従するように誘引送風機のインバータ速度を制御します。ちなみに炉内圧力制御は正動作です。

フィードフォワード制御

炉内圧力制御では、外乱による圧力変動を抑制するためフィードフォワード制御が用いられることがあります。炉内圧力制御において外乱となるのは流入流量の変動です。流入流量は燃料流量と燃焼用空気流量の2つがありますが一般的には燃焼用空気の変動フィードフォワード制御に用いられます。FF制御の例を以下に示します。

燃焼用空気流量(制御出力MVもしくは測定値PV)の変化率にゲインを掛けた値を炉内圧力制御の出力MVに加えます。例えば燃焼用空気流量が増加方向に制御されるとき、FF制御によって直ちに誘引送風機インバータの回転速度を増やします。逆に、燃焼用空気流量が減少方向に制御されるときは誘引送風機インバータの回転速度を減らします。

メモ:米国における炉内圧力制御に関する規定

米国プラントの事情について私も全然知らないですが、NFPA(全米防火協会)の要求事項をメモとして記します。NFPA 85: Boiler and Combustion Systems Hazards Code には以下の内容が規定されています。

1点目は前述のフィードフォワード制御のことです。2点目は炉内圧力計に関する内容です。日本国内の規則では特に規定はありませんが、米国規則では圧力計を3台設置して監視するように要求されています。

3点目は、例えば炉内圧力がある値を下回ったとき誘引送風機の回転速度MVに上限リミット、炉内圧力がある値を上回ったときMV下限リミットが設定されます。自動/手動関わずMVの上下限が設定されます。この制限設定によって、誘引送風機(もしくは誘引ダンパ)が危険方向(圧力異常高、異常低の方向)に操作されないように制限されます。

4点目は、MFT (Master Fuel Trip) 動作時の規定です。MFT動作時は燃料の供給が直ちに遮断されるため、炉内圧が急低下するおそれがあります。炉内圧の急低下を防ぐため、MFT動作時は炉内圧力制御の出力MV(誘引送風機の回転数速度設定)に直ちに減らします。

詳細については以下の記事をご参考ください。

www.powermag.com

まとめ

炉内圧力制御について解説しました。炉内圧力制御はボイラドラムレベル制御主蒸気温度制御に比べると割とシンプルな制御ではあります。

米国では日本以上に厳しい要求がある印象です。国内プラントでこれらを行う義務はありませんが制御のアイデアの一つにはなるかと思います。