蒸気配管の放熱ロスと保温材の効果

蒸気配管における放熱による熱損失について解説します。

蒸気配管の熱損失

蒸気配管は、配管内の高温の蒸気と周囲環境との間で熱の移動があることで熱損失が発生します。この熱損失の主な要因は以下の通りです。

  1. 温度差: 配管内の蒸気温度と外気温度の差が大きいほど、熱損失が増加する。

  2. 保温材の性能: 保温材の熱伝導率が高い場合や厚さが不足している場合、放熱が増える。
  3. 保温材の劣化: 経年変化によって保温材が劣化すると、熱伝導率が上昇し断熱効果が低下する。
  4. 配管表面積: 配管の径や長さが大きいほど、放熱の影響が大きくなる。

蒸気配管の熱損失を低減する方法

蒸気配管の放熱による損失を低減する対策は以下の方法が挙げられます。

  1. 適切な保温材の選定:熱伝導率が低く、耐熱性が高い保温材を選びます。ロックウールやグラスウールが一般的です。また、保温材の厚さが不十分だと、断熱効果が大幅に低下します。
  2. 定期的な点検と補修:保温材は経年変化や湿気によって劣化します。
  3. バルブやフランジ部の断熱強化:バルブやフランジ部は熱損失が発生しやすいため。
  4. 蒸気圧力の適正化:飽和蒸気の圧力を下げると、飽和温度が低下し、温度差による熱損失が減少します。ただし、プロセスに悪影響を与えないか注意が必要です。

配管の熱損失の計算

配管1mあたりの放熱の損失(W/m)は以下の計算で求められます。

 Q = \dfrac{2 \pi (T_o - T_i)}{\dfrac{2}{D_1 h_i} + \dfrac{\ln{ ( \frac{D_2}{D_1} ) }}{k_{pipe} } + \dfrac{\ln{ ( \frac{D_3}{D_2} ) }}{k_{insulator}} + \dfrac{2}{D_3 h_o}}

 T_i:蒸気温度 [ ℃ ]
 T_o:周囲温度 [ m ]
 D_1:配管内径 [ m ]
 D_2:配管外径=保温材の内径 [ m ]
 D_3:保温材の外径 [ m ]
 h_i:配管内側の熱伝達率 [ W/(m2・k) ]
 h_o:配管外側の熱伝達率 [ W/(m2・k) ]
 k_{pipe}:配管の熱伝導率 [ W/(m・k) ]
 k_{insulator}:保温材の熱伝導率 [ W/(m・k) ]

計算式は以下のように簡略化してもよいです。

 Q = \dfrac{2 \pi (T_o - T_i)}{\dfrac{\ln{ ( \frac{D_3}{D_2} ) }}{k_{insulator}} + \dfrac{2}{D_3 h_o}}

横軸を配管サイズ、縦軸を熱損失とするグラフを作成してみました。計算条件は下記の通りです。

蒸気温度:170℃
周囲温度:20℃
保温材の熱伝導率  k_{insulator} = 0.04\, \lbrack \mathrm{W/ (m \cdot K)} \rbrack
外部の熱伝達率  h_o = 15 \, \lbrack \mathrm{W/ (m^2 \cdot K)} \rbrack

これらの数字は適当な数字ですが、大体のイメージは掴めるかと思います。配管呼び径も外径とは異なるので、計算結果はあくまで概算値になります。

このグラフを見ると保温材の厚さが薄いほど、配管の放熱ロスが大きくなることがわかります。

まとめ

蒸気配管の熱損失の要因と計算方法について紹介しました。蒸気配管からの熱損失は、適切な保温材の選定・施工や運用の見直しによって低減できます。

参考サイト

TLVのサイトで放熱ロスによるドレン量が計算可能です。

蒸気配管の放散熱量によるドレン | 技術計算ツール | TLV[