誘導発電機を系統に連系した際に生じる瞬時電圧低下率について、電験2種の過去問を問いてみます。
平成22年 電験2種二次試験 電力・管理 問4
図のような高圧配電系統で,誘導発電機を連系した際,次の問に答えよ.
ただし,基準容量 におけるアルミ電線 の%インピーダンスは 当たり ,アルミ電線 の%インピーダンスは 当たり とする.
(1) 基準容量 において,配電系統との連系点からみた系統側の%インピーダンスを とした場合, , の値をそれぞれ求めよ.
(2) 基準容量 において,誘導発電機の拘束インピーダンスはリアクタンス成分のみとし,これを とした場合, の値を求めよ.
(3) 誘導発電機の連系によって発生する,配電系統との連系点における瞬時電圧低下率を求めよ.なお,配電系統との連系点から誘導発電機端までのインピーダンスおよび誘導発電機の抵抗分は無視する.
(1) 連系点から見た系統側の%インピーダンス
\begin{align}
R_0 + j X_0 = 16.15 + j 36.45 \, \lbrack \% \rbrack
\end{align}
ただの四則演算なので計算は省略します。
(2) 誘導発電機の拘束リアクタンス
\begin{align}
X = 20 \times \dfrac{10 000}{500} = 400 \, \lbrack \% \rbrack
\end{align}
400 kW を力率0.8で割って 500 kVA に変換します(これが重要)。そして、%インピーダンスを 10 MVA に換算すればOKです。
(3) 配電系統との連系点における瞬時電圧低下率
等価回路は以下のようになります。誘導発電機のリアクタンス に生じる電圧が連系点における電圧となります。
系統の電源電圧を 、連系点の電圧は連系前を 、連系後を とする。連系前後の電圧を比較し、電圧低下率を求める。
連系前
連系前は電流が流れていないので以下の関係が成り立つ。連系点における電圧は系統電源電圧に等しい。
\begin{align}
V_r = V_s
\end{align}
連系後
誘導発電機連系後の連系点における電圧は、分圧計算で以下の通り。
\begin{align}
V_r' &= \dfrac{X}{\sqrt{R_0^2 + (X_0 + X)^2}} V_s \\ &= \dfrac{400}{\sqrt{16.15^2 + (36.45 + 400^2)}} V_s \\ &= 0.9159 V_s
\end{align}
これは「誘導発電機連系後の連系点における電圧は系統電源電圧の91.59%である」という意味。ここまでわかればもう正解できたようなもんです。
瞬時電圧低下率
連系前の関係式 より連系前後の連系点電圧は以下のようになる。
\begin{align}
V_r’ = 0.9159 V_r
\end{align}
よって、瞬時電圧低下率 は以下の通り。
\begin{align}
\varepsilon &= \dfrac{V_r - V_r'}{V_r} \\ &= \dfrac{V_r - 0.9159 V_r}{V_r} \\ &= 1 - 0.9159 \\ &= 0.0841 = 8.41 \, \lbrack \% \rbrack
\end{align}
まとめ
誘導発電機の瞬時電圧低下率を分圧計算を使って計算してみました。テキストの解説では、電圧=電流×インピーダンス で電圧を求める例がありますが、実際は分圧計算で求めるのがシンプルでわかりやすいかと思います。
この計算方法は、実は誘導電動機の始動時の電圧低下の計算方法と全く同じです(以下の記事参照)。等価回路を作って、求めたい箇所の電圧を分圧計算で求めて、その値が基準よりいくら下がっているか?という考え方です。