サーマルリレー、静止形リレー、ショックリレーの特徴や使い分け

過負荷検知の保護リレーには主に以下の種類があります。

  • サーマルリレー
  • 静止形リレー
  • ショックリレー
  • ショックモニタ

それぞれの特徴や使い分けについて解説します。※ショックリレーとショックモニタは椿本チエインの登録商標です。

サーマルリレー(熱動形リレー)

モータの焼損を防止するためのリレーです。最も定番でおなじみの過負荷保護リレーです。

サーマルリレーは反限時特性です。反限時特性というのは電流と設定時間が反比例した特性です。つまり大きい過電流のときは短い時間で、比較時大きくない過電流のときは長い時間経過後にトリップするような特性のことで、以下のような曲線を示します。

超適当な絵ですね(笑) 各メーカーのカタログに動作特性曲線が載ってますので詳細はそちらを参照してください。

サーマルリレーは熱によって動作します。部品内部にヒータエレメントとバイメタルがあります。負荷電流が流れるとヒータエレメントにジュール熱(RI^2)が発生します。その熱の大きさによってサーマルリレー内部のバイメタルが変形して、所定の変形量のときに接点動作を行います。熱によって動作するのでサーマルリレーは熱動形過負荷継電器とも呼ばれます。あまりこう呼ぶ人はいないかもしれませんが。。。

サーマルリレーの注意点として、バイメタルを使って熱的に検知しているので同じ電流値でも同じ時間で動作するとは限りません。理由は元々の温度に影響を受けるからです。詳しくは「ホットスタート」や「コールドスタート」で調べてみてください。

静止形リレー

熱的に検知を行うサーマルリレーに対して、電子的に過負荷検知を行うリレーを静止形リレーと言います。オムロンのSEやK2CMが定番です。

静止形リレーは電子的に過負荷検知を行うので電流整定値を細かく設定することができます。温度による影響は受けません。サーマルリレーで問題ないときはサーマルリレーを使って、細かく設定する必要がある(=サーマルリレーでは協調を取るのが難しい)ときは静止形リレーという使い分けになるかと思います。

また、動作特性としてはサーマルリレーと同じ反限時動作型と、一定の電流以上のとき瞬時トリップさせる瞬時動作型の2種類があります。過負荷で瞬時に動作させたい場合は瞬時動作型を選定します。

瞬時動作って具体的には何秒なのか?という疑問に関しては、オムロンの取説には「電流整定値の140%過電流において0.5s以下」と書いてあります。瞬時タイプの動作特性を以下に示しますが、まぁとにかく瞬時で動作する、くらいのイメージです。ちゃんと機械を保護したいときは後述のショックリレーを使ったほうが無難と思われます。

画像引用:モータ・リレーの瞬時動作とはどんな動作ですか? - 製品に関するFAQ | オムロン制御機器

ショックリレー

サーマルリレーやモータリレーの他に、ショックリレーというものがあります。※ショックリレーは椿本チエインの商標です。

ショックリレーの目的は機械保護です。サーマルリレーはモータを保護するためのリレーですが、ショックリレーは機械(負荷)の保護に使用されます。例えば、破砕機やコンベヤで異物を噛み込んだとき瞬時にトリップさせたい、という用途に使います。通常のサーマルリレーではトリップ動作まで数秒~数分(あるいは数十分)かかるのでそういった用途では使うことが出来ません。

また、瞬時タイプの静止形リレーとの違いとしては、ショックリレーはショックタイム(動作時間)を任意の時間に設定することができます。例えば「定格電流120%以上の状態が0.5秒経過したらトリップさせたい」というような使い方です。

ショックモニタ

椿本チエインの製品では、ショックリレーの他にショックモニタという製品があります。

ショックリレーは電流を監視しているのに対してショックモニタは入力電力を監視しています。なので、ショックリレーより正確に負荷の監視が可能で、微小な負荷変動を検知したいときはショックモニタが有効です。当然ながらショックリレーより高価です。

ショックモニタはショックリレーより細かく設定することが出来ますが、主な違いは以下の通りです。

  • 2段階の過負荷設定および2接点出力が可能。例えば、120%×0.5秒 OR 150%×0.1秒でトリップ、のような使い方が出来ます。ショックリレーは接点出力1個です。
  • 最短の動作設定時間は0.05秒(電源周波数が50Hz未満の場合は0.1秒)。ショックリレーの設定可能時間は0.2秒~。
  • トルク監視機能付き。

その他、いろいろ詳細設定も出来るようです。詳しくは椿本チエインのカタログを参照してください。

過負荷保護リレーの使い分け

各リレーの選定についてフローチャートを作成してみました。

反限時ならサーマルか静止形リレー、機械保護が目的ならショックリレー、ショックリレーより高精度に監視したければショックモニタ、とりあえず瞬時でトリップできればよいのであれば瞬時動作の静止形リレー、といった使い分けになるかと思います。

まとめ

過負荷検知用のそれぞれのリレーの違いや使い分けについて説明しました。サーマルリレーはモータ焼損保護、ショックリレーは機械保護が目的であることを理解しましょう。どちらも過負荷時にトリップ動作させるリレーですが、その目的が異なります。

参考サイト