単相3線回路の低圧電路における短絡電流の計算の仕方について解説します。
単線図
以下のようなモデルを想定してみます。
高圧受電していて単3変圧器が設置されていて、低圧ケーブルの末端で短絡が発生したケースです。受電側の高圧ケーブルはインピーダンスが小さいとして今回は無視します。
等価回路
単相の低圧回路で短絡が発生した際の等価回路は以下の図で表されます。
系統のインピーダンスを2倍しているのは今回は三相短絡ではなく単相短絡だからです。2本の線を短絡電流が流れるため2倍となります。低圧ケーブルのインピーダンスを2倍しているのも同様の理由です。短絡電流の行きと帰りがあるためケーブル距離の2倍のインピーダンスで計算します。単相変圧器の短絡インピーダンスのみそのまま使用します。
ちなみに三相回路における単相短絡電流を求める場合は三相短絡電流に をかければ良いですが、今回は単相変圧器のインピーダンスを考慮する必要があるので上記のようなやり方を取っています。
短絡電流の計算式
パーセントインピーダンスを用いると、単相回路の短絡電流は以下の式で表されます。
\begin{align}
I_s = \dfrac{P_B}{V} \times \dfrac{100}{\% Z_{source} \times 2 + \% Z_{tr} + \% Z_{cable} \times 2}
\end{align}
:基準容量、:電圧(210Vまたは105V)
単相回路なので は付けていない点に注意してください。
単3変圧器の短絡インピーダンス
単3変圧器のインピーダンスは、外線-外線のインピーダンスと外線-中性線のインピーダンスの2種類が存在します。変圧器銘板に記載されているのは通常、外線間の%Zです。100V回路の短絡計算をするときは、外線-中性線の%Zはメーカーに別途問い合わせるか、文献等の参考値を参照することになります。また注意点として、外線-中性線の%Zを使って短絡計算する場合、変圧器の自己容量は定格容量の半分とします。例えば定格500kVAの単3変圧器で外線-中性線の短絡計算をするときは自己容量を250kVAとして、自己容量ベースの%Zから基準容量ベースの%Zに換算します。
外線間の短絡電流と外線-中性線の短絡電流どちらが大きい?
変圧器直下の低圧母線での短絡電流
系統のインピーダンスを無視した場合、電圧(V)と変圧器インピーダンス(Ω)より変圧器二次側の短絡電流は以下のようになります。
\begin{align}
I_s = \dfrac{V}{Z_{tr}}
\end{align}
外線-中性線の電圧105Vは外線間電圧210Vの半分です。もし仮に変圧器のインピーダンス(Ω)も同じように半分であれば、変圧器直下においては210V線の短絡電流と105V線の短絡電流は等しくなります。しかし実際には単3変圧器の外線-中性線のインピーダンスのオーム値は、外線間オーム値の半分より小さい値になります。したがって変圧器直下の低圧母線においては 外線-中性線の短絡電流>外線間の短絡電流 となります。
低圧ケーブルの末端での短絡電流
低圧ケーブルの末端で短絡を考える場合、短絡電流の大きさはケーブルのインピーダンス、つまりケーブルサイズや配線距離の条件によって変わってきます。
単相3線で現場の分電盤に送っているケースで考えると、ケーブルのインピーダンスが変圧器のインピーダンスに比べて小さい場合は上記の通り外線-中性線の短絡電流>外線間の短絡電流となります。逆に配線距離が長くケーブルのインピーダンスの影響が相対的に大きくなると 外線-中性線の短絡電流<外線間の短絡電流 になります。
まとめ
単3回路における短絡電流の計算方法について解説しました。注意点は以下の通りです。
- 単相回路の短絡計算は、三相回路の単相短絡電流を求めるやり方(三相短絡電流に をかける方法)とは異なります。
- 外線-中性線と外線間では変圧器の短絡インピーダンスが異なる。%Z換算時の自己容量にも注意。
- 変圧器直下では外線-中性線の短絡電流のほうが外線間の短絡電流よりも大きい。
参考文献
三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器 技術資料集