電磁弁の種類、用語

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電磁弁で使われる用語について紹介します。ネット上には電磁弁に関するページや資料がいくつもあるのでそちらを参考にしてもらってもいいですが、ここでは計装担当の視点で説明します(笑)

プラントの計装担当が電磁弁を選定する場合、過去に採用した型式と同じもの選定すれば良いケースがほとんどなのですが、一応技術者として電磁弁に関する一通りの用語を理解しておきましょう。

ポート数

ポート数とは電磁弁の口の数のことです。計装担当が電磁弁を購入する場合は、水や空気の遮断に使うことが多いのでポート数は2ポートであることがほとんどではないでしょうか。ただし注意点として、配管が1本(1方向)だとしても2ポートとは限りません。電磁弁の入口と出口に加えて排気ポートが必要なケースがあるためです(圧縮空気で機械を制御する場合など)。

油圧式シリンダーや空気式シリンダーでは4ポートや5ポートを使用するケースもありますが、計装担当が単品で購入することはまずないかと思います。

単動式(シングルソレノイド) or 複動式(ダブルソレノイド)

シングルソレノイドはその名の通りソレノイドが1個の電磁弁。シングルの場合は、例えば「通電時は開、非通電時は閉(電磁弁内部のバネの力で閉になる)」といった使い方です。計装技術者が電磁弁を購入する場合はシングルソレノイドであるケースがほとんどです。なぜなら電磁弁の用途が水や空気の遮断といったシンプルな使い道になるからです。ダブルソレノイドはソレノイドコイルが2個の電磁弁です。空気式や油圧式のシリンダーに使われることが多いです。

2位置 or 3位置

○位置=電磁弁内部のポジションの数。シングルソレノイドの場合は通電時と非通電時の2つの状態があるので2位置です。ダブルソレノイドは2位置または3位置になります。以下の図はダブルソレノイドの4ポート3位置電磁弁の記号です。

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3位置というのは要するに、ソレノイドAが励磁されたとき、ソレノイドBが励磁されたとき、どちらも励磁されていないとき(=バネの力が働く)の3つのポジションが存在するということです。「ダブルソレノイドで2位置」ということはバネが存在せず、両方のソレノイドの励磁が切れているときは現状位置保持、つまり最後に励磁したほうのポジションが保持されるので2位置というわけになります。

NC(常時閉) or NO(常時開)

NC=Normally Closed、「非通電時、閉」「通電時、開」となる電磁弁のこと。NO=Normally Open、「非通電時、開」「通電時、閉」となる電磁弁のこと。NC、NOの言葉が使えるのは2ポート電磁弁に限ります。3ポートや4ポートだと常時ナントカとは言えないので。あと、通電のことを「ON」と言う人がいますが個人的には「通電/非通電」あるいは「励磁/非励磁(消磁)」という言い方を用いることを推奨します。こちらのほうが定義が明確です。

実際のところ、計装担当が購入する電磁弁の9割は2ポート2位置NC電磁弁と言ってもいいのではないでしょうか。

電磁弁記号の読み方

電磁弁のカタログや仕様書には以下のような記号がありますが、これは電磁弁内部の構造ではなく電磁弁の動作をイメージした図です。

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上の図は最もシンプルな2ポート2位置NC電磁弁の記号です。真ん中に四角が2個あるので2位置です。右側に付いてるギザギザはスプリング、左側に付いてる斜めが入った長方形はソレノイドを意味しています。非励磁状態ではバネが効いていて右側の動作、つまりPとAのポートは遮断状態になります。ソレノイドが励磁されたときは左側の動作、つまりPポートからAポートに流体が流れる状態になります。(P:加圧側のポート、入口のポート、A:出口のポート)

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上の図はダブルソレノイドの4ポート3位置電磁弁です。左側のソレノイドが励磁されたときは流体の流れは左の四角(クロスした矢印)で示された状態、右側のソレノイドが励磁されたときは右の四角(上向きと下向きの矢印)で示された状態、どちらも非励磁の場合はバネによって中央の状態、つまり遮断状態となります。

4ポートや5ポートの電磁弁を普段選定することはないですが、機械の油圧回路の図面を読むこともあるので電磁弁の記号の読み方は理解しておいたほうがい良いと思います。

直動式、パイロット式、パイロットキック式

電磁弁の構造のことを指します。以下のとおりです。

  • 直動式:ソレノイドの電磁力だけで開閉させる電磁弁。構造がシンプル。小口径向き(Rc 1/8, Rc 1/4)
  • パイロット式:差圧を利用して開閉させる電磁弁。消費電力小さい。大口径も可。
  • パイロットキック式:差圧がなくても開閉できて大口径もOK。直動式とパイロット式のいいとこ取り。ただし、コイルを上にした取付にする必要がある。つまり、垂直配管への電磁弁取付は不可。

パイロット式=電磁弁の前後の差圧を利用することで小さい力でも弁の開閉をさせることができる、のイメージです。水や空気の配管の場合、口径は15Aや25Aになることが多いので、私の場合はパイロットキック式を採用することが多いです。パイロットキック式は取付方向に制約があることだけを覚えていたら良いと思います。詳細や構造については下記のCKDのページが参考になります。ちなみに「パイロットキック式」でググってもCKDしか出てこないのですが他社の場合は何と言うのでしょうか、、、誰か教えて下さい。

CKD ワンポイントコラム Vol.31

サージキラー

電磁弁はその名の通りコイル使っており誘導負荷ですので通電OFF時、  e = - L \dfrac{di}{dt} の逆起電力、いわゆるサージ電圧が発生します。電磁弁の開閉でサージが発生すると制御回路に影響を及ぼして電子機器の破損の原因となり得ます。なので、電磁弁を使用する場合はサージを抑制するためにサージキラーを設ける必要があります。電磁弁を選定するときにはオプションで指定することができます。制御盤側で電磁弁用のサージキラーを設ける場合もあります。この場合は電磁弁側にはサージキラーは不要です。

まとめ

電磁弁に関する用語について紹介しました。電磁弁というとシンプルな部品のイメージですが、実は種類が非常に多く、ゼロから型式を選定しようとするとなるとまぁまぁ大変です。用語を正しく理解して選定ミスをしないようにしましょう。

参考サイト