サーマルリレーを取り付ける位置でサーマル設定値が変わる話

サーマルリレーの設置位置によって設定値が変わるという話を、自分用メモとして記載します。

スターデルタ始動でΔ回路内にサーマルリレーがあるケース

スターデルタ回路では下の図のようにサーマルリレーをMCCBの下に付けることが多いです。この場合はモータの定格電流を設定すれば何も問題ありません。

ただし、まれにサーマルリレーが分岐の先(電磁接触器MCのライン)に付いている場合があります。この場合、サーマルリレーに流れる電流は線電流ではなく、Δ結線の相電流になります。相電流は線電流の  \dfrac{1}{\sqrt{3}} 倍になるのでサーマル設定としてはモータ定格電流の  \dfrac{1}{\sqrt{3}} 倍の値を設定します。以下に三菱電機の回答を引用します。

スターデルタ始動器に使用するサーマルリレーの選定について | よくある質問(FAQ) | 三菱電機 FA

サーマルリレーをデルタ相内に設置して相電流検出とする場合は、モータ全負荷電流値の1/√3倍の電流に設定可能なヒータ呼びを選定し、電流つまみをモータ全負荷電流値の1/√3倍の電流に設定して使用願います。

モータ個別で進相コンデンサを設置しているケース

小規模の設備では、モータの分岐回路ごとに力率改善用の進相コンデンサを付けることがあります。もしサーマルリレーがコンデンサより負荷側(モータ側)に付いている場合(a)であればサーマルリレーにはモータ定格電流を設定すればよいです。

しかし、もしサーマルリレーがコンデンサより電源側に付いている場合(b)は、力率改善後の電流値を基準にサーマルを設定する必要があります。

モータの定格電流を  I_n 、モータ全負荷時の力率を  \cos {\theta_1}コンデンサによる力率改善後の力率を  \cos {\theta_2} とするとサーマルリレーの設定値は以下のように求められます。

 I = \dfrac{\cos {\theta_1}}{\cos {\theta_2}} I_n

例えばモータ力率  \cos {\theta_1} = 0.85 、力率改善後が   \cos {\theta_2} = 1 とするとサーマルリレーにはモータ定格電流の0.85倍の値を設定します。

まとめ

今回2種類のケースを紹介しました。どちらのケースもいちいち計算する必要があるのが面倒でわかりにくいです。また、何も知らずにモータ定格電流そのまま設定してしまうとモータの焼損につながるおそれもあります。個人的には、モータ定格電流で設定できる位置にサーマルリレーを取り付けるのが確実かつ無難と思います。