発電機の力率一定制御とは?

発電設備の力率一定制御(APFR制御)について説明します。太陽光発電設備のケースが多いかもしれないですが、今回は同期発電機を例にして考えてみます。

力率一定制御とは?

力率一定制御とは、発電設備の受電点における力率が目標値に追従するように発電機の制御を行うことです。ここで言う力率とは発電機の力率ではなく受電点の力率のことを指します。つまり受電点力率一定制御とは系統との有効電力と無効電力のバランスを一定にすることです。

力率一定制御の目標値をいくらにするかは電力会社との協議によります。ちなみに『電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン』には「受電点における力率を85%以上とし、かつ系統側から見て進み力率とならないようにする」と決められています。※低圧および高圧の場合。詳細は系統連系規程を参照ください。

「系統側から見て」「発電設備側から見て」とは?

系統連系規程には「系統側から見て」と「発電設備側から見て」という表現が出てきます。これが少々ややこしい。力率の正と負の向きの考え方のことなのですが、とりあえず以下のように理解すればOKです。

もし発電機がない場合、設備はモータ負荷がほとんどなので遅れ力率になると思います。電動機は遅れ無効電力を消費する負荷なので、有効電力と遅れ無効電力が系統から設備へ送られている状態です。これが「系統側から見て遅れ力率」の状態です。系統から見ると大きな電動機(遅れ無効電力を消費する誘導性負荷)があるってイメージです。

逆に「系統側から進み力率」とは、遅れ無効電力が発電設備から系統に送られている状態のことです。例えば、軽負荷時に必要以上の進相コンデンサを投入してる場合などは進み力率となります。

このように遅れ無効電力が流れている方向がどちら方向なのか理解すればOKです。「進み力率とならないようにする」とはつまり、遅れ無効電力が発電設備から系統に流れないようにする、ということです。

力率一定制御の例(力率100%の場合)

受電力率設定値:100%、同期発電機の発電電力:1000 kW、所内負荷:500 kW(遅れ力率0.85)のケースで考えてみます。

売電電力は 1000 - 500 = 500 kWになります。無効電力は力率一定制御によって制御されます。力率100%で制御しているときは系統から受け取る(また発電設備から送り出す)無効電力がゼロであることを意味します。言い換えると、所内で消費する無効電力=発電機が供給する無効電力、となります。

所内負荷が消費する無効電力が310 kvarなので、発電機は310 kvarを供給するようにAVRによって制御されます。このときの発電機の力率は PG = 1000 kW, QG = 310 kvar より、95.5%(遅れ)となります。

もし所内の負荷が増えて無効電力の消費が増加したら、それに応じて発電機側も無効電力を調整します。力率一定制御の流れは以下の通りです。

  1. 所内の負荷が増加する。無効電力が増える。
  2. 受電力率が100%から遅れ方向に変化する。
  3. 同期発電機のAVRが無効電力の供給を増やす指令を出す。
  4. 同期発電機の界磁電流が増える。
  5. 同期発電機の内部誘導起電力が高くなる。
  6. 同期発電機の遅れ無効電力の供給が増える。
  7. 負荷が消費する無効電力=発電機が供給する無効電力となって、受電力率が100%に維持される。

以上のようにAVR(力率一定制御のときはAPFRと言いますが)のフィードバック制御によって受電力率が常に目標値となるように無効電力が制御されます。負荷が減った場合はこの逆の動きになります。同期発電機の界磁電流を強くすると遅れ無効電力が増えるというのは電験でよく出てくる同期機のV曲線の話ですね。

力率一定制御の例(力率95%の場合)

売電電力が500 kWで受電点力率の設定値が95%の場合、系統から受け取る無効電力Qは164 kvarになります。

 Q = \dfrac{500}{0.95} \times \sqrt{1 - 0.95^2} = 164 \mathrm{\, kvar}

この場合、下の図に示す通り同期発電機が供給する無効電力は146 kvarとなります。

まとめ

同期発電機を有する発電設備の力率一定制御について説明しました。電気設計を始めた最初の頃は無効電力はイメージが付きにくいと思います。特に遅れと進み、消費と供給の言葉に混乱しがちです。発電設備において無効電力の流れを理解するには同期機の仕組みをしっかり理解することが大事だと思います。