ソフトスターターとは?動作原理と特徴について

ソフトスターターの動作原理と特徴について解説します。

ソフトスターターとは?

ソフトスターターとは、モータの始動電流を抑制してスムーズに始動させるための電気機器です。ソフトスターターはサイリスタの位相制御によってモータの印加電圧を徐々に上げて始動を行います。ソフトスターターの特徴は以下の通りです。

  • 始動電流を抑制できる。
  • Y→Δ切替時のようなショックがなくスムーズに始動できる。

ソフトスターターは日本国内ではほぼ使われていませんが海外では割とメジャーな始動方式です。

ソフトスターターの回路

ソフトスターター回路を以下に示します。

ソフトスターター回路

始動時にはサイリスタの位相制御によってモータの印加電圧を徐々に上げていきます。電圧100%=定格電圧まで上がったところでバイパス回路(商用電源)に切り替えて始動完了です。したがってモータが通常運転しているときは定格電圧・定格周波数での運転になります。始動時はサイリスタ制御によって高調波が発生しますが、始動完了後はバイパス回路に切り替えるので高調波は発生しません。

ソフトスターターの始動特性

直入始動、スターデルタ始動、ソフトスターターそれぞれの始動特性を以下の図に示します。

直入始動、スターデルタ始動、ソフトスターターの始動トルク特性

上の図で示したソフトスターターの始動トルクカーブはあくまでイメージです。実際の始動特性はパラメータで調整することができ、インバータと同様に加速時間の調整が可能です。

スターデルタ始動との違い

減電圧始動法としてはスターデルタ始動が主流ですが、スターデルタ始動ではスター結線からデルタ結線への切替時にトルクのショックが発生します。ポンプの場合、この急激な変化によって配管内の圧力が急激に上昇し、ウォーターハンマー現象が発生することがあります。ウォーターハンマーが発生すると配管全体に強い衝撃がかかり、配管の破損などトラブルの原因となります。

一方、ソフトスターターではそのようなショックは発生せずスムーズな始動を実現できます。上のトルクカーブで示したような滑らかな始動になります。ソフトスターターはポンプ負荷でウォーターハンマーを回避する目的でよく用いられます。ポンプ以外では、コンベヤや破砕機等において機械的な衝撃を回避するためにソフトスターターが採用されることがあります。

また、スターデルタではY→Δ切替時に非常に大きな励磁突入電流が発生しますが、ソフトスターターではそのような突入電流もありません。

インバータ始動との違い

インバータ制御では電圧と周波数を制御します。一方、ソフトスターターでは制御するのは電圧だけです。ソフトスターターではモータ始動完了後、サイリスタ回路からバイパス回路に切り替わり、モータは定格電圧・定格周波数での運転となります。したがってソフトスターターでは速度制御は出来ません。ソフトスターターはあくまでもなめらかな始動な実現するための機器です。

まとめ

スターデルタ、ソフトスターター、インバータの違いを表にまとめました。

ソフトスターターのメーカーとしては、シュナイダーやABBが有名です。海外では一般的な製品ですが日本国内においてソフトスターターの知名度は低く、使われることはほとんどありません。速度制御は不要だがスターデルタではトルクショックが懸念されるケースにおいてはソフトスターターが選択肢の1つになります。