絶縁監視装置とは?Io, Ior, Igr方式の違いについて

低圧電路の絶縁状態を常時監視する絶縁監視装置について解説します。

絶縁監視装置とは?

絶縁監視装置とは電路の絶縁状態を監視する装置です。主に高圧受電設備において低圧フィーダの絶縁監視に用いられます。低圧電路の漏れ電流を常時監視しており、漏れ電流が設定値以上かつ設定時間を超えたときに警報を出力します。

絶縁状態を測定する方法としては絶縁抵抗測定が最もポピュラーですが、絶縁抵抗測定は停電状態でないとできません。絶縁監視装置は通電時も計測可能なのと、常時電路の絶縁を監視しているのが特徴です。いつ、どれだけの漏れ電流が流れたのかがわかるので異常箇所の調査にも役立ちます。

ちなみに絶縁監視装置のメーカーとしては光商工やミドリ安全が有名です。

測定原理

漏れ電流の測定方式には以下の3種類があります。Io方式が最も安価な方式で、絶縁監視装置においては絶縁抵抗の漏れ電流を精度良く検出できるIor方式またはIgr方式が主流です。

  • Io方式
  • Ior方式
  • Igr方式

絶縁監視装置以外の手段で、通電中に漏れ電流を測定したい場合はクランプメーターを使うことが多いですが、通常のクランプメーターはIo方式です。※一応、Iorが測れるクランプメーターも存在します。

Io方式

Io方式は、B種接地の接地線に流れる漏れ電流をZCTで検出する測定方式です。接地線にクランプメーターを付けて漏れ電流を測定するイメージと同じです。3種類の測定方式の中で最も安価なIo方式ですが、その欠点は対地静電容量の漏れ電流(無効分)も拾ってしまう点にあります。

Io方式で検出できる漏れ電流Ioは、絶縁抵抗分の漏れ電流Iorと対地静電容量の漏れ電流Iocの合成ベクトル和です。Io、Ior、Iocのベクトル図を以下に示します。

漏電による感電や火災に関係するのは絶縁抵抗分の漏れ電流Iorです。無効分のIocは絶縁劣化には本来関係のない要素です。しかし、Io方式ではIocが大きい場合、Iorを精度良く検出できないのが欠点です。

余談:インバータでELCBが誤動作する理由

「インバータ負荷ではELCBが誤動作することがある」というのを聞いたことがあるかもしれません。これは対地静電容量の漏れ電流Iocによって発生します。インバータではキャリア周波数に起因する高調波成分によって無効分の漏れ電流Iocが大きくなります。  I_{oc} = 2 \pi f CE の式における周波数  f が高くなるからです。ELCBはZCTでIor(有効分)とIoc(無効分)の合成成分であるIoを見ているので、Iocが増加するとIoも大きくなって誤動作が発生します。これがインバータがELCBの誤動作に繋がる理由です。

Ior方式

Ior方式の絶縁監視装置では絶縁抵抗の正味の漏れ電流Iorのみを検出することが出来ます。回路図を以下に示します。

ZCTで検出した漏れ電流Ioと対地電圧Eの位相差から、絶縁抵抗の漏れ電流Iorを演算します。

Igr方式

Igr方式は接地相の絶縁劣化も検出できるのが特徴です。Ior方式では非接地側の電線の絶縁劣化しか検出できませんが、Igr方式では接地側の電線の絶縁劣化も検出可能です。

Igr方式ではB種接地の接地線に変圧器を取り付け、その変圧器を介して電路に商用周波数と異なる周波数(十数Hz)の微小な電圧信号を注入(重畳)します。ZCTで漏れ電流Igを検出して、電圧信号と電流Igから絶縁抵抗の漏れ電流 Igr(Igの有効分)を演算します。Ior方式よりも優秀ですが、当然ながら機器のコスト面では Igr > Ior > Io となります。

参考サイト