「超同期セルビウス方式」「二重給電誘導発電機」とは?

誘導機の速度制御の1つである超同期セルビウス方式について解説します。また、超同期セルビウス方式を使った例として、風力発電で用いられる二重給電誘導発電機 (DFIG) の動作について解説します。

超同期セルビウス方式

超同期セルビウス方式は二次励磁方式の1つです。二次励磁方式は巻線型誘導機をベースとしており、二次側(回転子巻線)が交流電源に繋がっているのが特徴です。一次側と二次側の両方から給電するので超同期セルビウス方式の誘導機を二重給電誘導機という言い方もします。同期速度以上での電動機運転が出来るので「超同期」セルビウス方式と言います。また、このは制御方式は発電機(特に風力発電)で使用されることが多いため、二重給電誘導発電機DFIG (Double-Fed Induction Generator) という呼ばれ方もします。

特徴

超同期セルビウス方式の特徴は①同期速度以上で誘導電動機として運転できること②同期速度以下で誘導発電機として運転できることです。通常の誘導機だと同期速度以上では発電機、同期速度以下では電動機になりますが、超同期セルビウスでは二次周波数にすべり周波数の交流を印加することで、同期速度以上の電動機運転や同期速度以下の発電機運転を実現しています。

構成図

誘導発電機として運転するとき

超同期セルビウス方式の構成を以下に示します。以下は風力発電機(DFIG)の例です。

固定子側は通常の誘導機と同様に系統電源に接続されます。回転子側は系統電源から電力変換装置を経由して二次巻線に接続されます。電力変換装置としては一般的にサイクロコンバータが使用されます。サイクロコンバータからはスリップリングを経由して回転子巻線に繋がっています。DFIGにおいて機械的入力、一次電力、発電電力の向きは全て一方方向ですが、二次電力のみすべりの状態によって流れる方向が変化します。すべりが正(回転速度が同期速度より低い状態)のとき二次電力は系統電源から回転子巻線へ給電する方向に流れます。すべりが負(回転速度が同期速度を超えている状態)のとき二次電力は回生方向となり系統電源に向かって流れます。

損失を無視すると機械的出力  P_m 、一次電力  P_1 、二次電力  P_2 、発電電力  P_o の関係は以下の式で表されます。

\begin{align} P_m = P_o \end{align} \begin{align} P_1 = \dfrac{P_m}{1 - s} \end{align} \begin{align} P_2 = \dfrac{s P_m}{1 -s} = sP_1 \end{align}

例として、すべりs=0.1とした場合、機械的入力を1とすると一次電力は1.11、二次電力は給電方向に0.11となります。トータルの発電電力は1.11 - 0.11 = 1であり機械的入力と等しいです。また、同期速度以上の場合、例えばすべりs = -0.1だと機械的入力1に対して一次電力は0.91、二次電力は回生方向に0.09です。

周波数に関しては、二次側回路の周波数=すべり周波数です。DFIGでは回転速度と同期速度の差分を見て、すべり周波数に相当する周波数の励磁電流を電力変換装置から誘導機の二次側巻線に供給しています。

例えば極数4、周波数60Hzの誘導機で考えると同期速度は1800 rpm (60 Hz)です。もし発電機駆動軸の回転数が1500 rpmのときは、すべり周波数300 rpm、つまり10 Hzの交流を二次側に供給させます。これによって固定子の回転磁界は同期速度1800 rpmとなって系統の周波数と同期した状態になる、という仕組みです。DFIGでは風車の回転速度を常時検出し、それに応じた周波数を二次側に供給しています。ちなみに、すべりが負(回転速度が同期速度を超えている状態)においては二次側の回転磁界は逆方向(逆相)となります。

誘導電動機として運転するとき

超同期セルビウス方式の誘導機が電動機として動作するときの図を以下に示します。

電動機運転において二次電力の向きは、すべり正のとき回生方向、すべり負のとき給電方向となります。発電機のときと逆になりますので注意してください。

発電機のときと同様に二次側の回路の周波数はすべり周波数です。二次側に供給する励磁電流の周波数を変化させることで回転速度が変化する仕組みです。

等価回路を描いて動作原理を理解する

超同期セルビウス方式の誘導機を等価回路で考えてみます。まず誘導機の基本回路を以下に示します。

 V_1:一次側電圧(相電圧)、 V_2:二次側電圧(相電圧)
 R_1:一次側(固定子)抵抗、 X_1:一次側(固定子)リアクタンス
 R_2:二次側(回転子)抵抗、 X_2:二次側(回転子)リアクタンス

通常のかご型誘導電動機では二次側回路は短絡されていますが、二次励磁方式では二次側に交流電圧  V_2 を印加します。

二次側回路をsで割ります。

二次側回路の値を一次側に換算してT形等価回路にします。鉄損は無視し、励磁リアクタンスを  X_M とします。

普通の誘導機の等価回路と同じように二次側の抵抗  \frac{R^{\prime}_{2}}{s} を銅損分  R^{\prime}_{2}機械的出力  \frac{1-s}{s} R^{\prime}_{2} に分けます。そして実は電圧も同様に  V^{\prime}_{2} \frac{1-s}{s} V^{\prime}_{2} に分けることができます。後者は機械的エネルギーに相当します。

以下の図が超同期セルビウス方式のT形等価回路です。超同期セルビウス方式における機械的出力(または機械的入力)は赤色の破線箇所で示されます。

機械的出力(または機械的入力) P_mは以下となります。

\begin{align}
P_m &= 3 \times \left( \dfrac{1-s}{s} R^{\prime}_{2} I^{\prime 2}_{2} + \mathrm{Re} \left[ \dfrac{1-s}{s} \dot{V^{\prime}_{2}} \overline {\dot I^{\prime}_{2}} \right] \right)
\\&= \dfrac{3(1-s)}{s} \left( R_{2} I^{2}_{2} + \mathrm{Re} \left[ \dot{V_{2}} \overline {\dot I_{2}} \right] \right)
\end{align}

 P_mが正のときは電動機、 P_mが負のときは発電機です。また、電圧と電流の位相をそれぞれ \phi_v \phi_iとすると、

\begin{align}
P_m = \dfrac{3(1-s)}{s} \left\{ R_{2} I^{2}_{2} + V_{2} I_{2} \cos{( \phi_v - \phi_i )} \right\}
\end{align}

と表されます。二次電流  \dot I_{2} の位相と大きさは、上図のT形等価回路から重ね合わせの理を用いて二次電流(一次側換算)  \dot I^{\prime}_{2} を求める必要がありますが、複雑な計算になるので今回は省略します。

まとめ

超同期セルビウス方式の概要と等価回路について説明しました。以上の内容より、超同期セルビウス方式では二次電流と二次側周波数を調整していることが理解できると思います。

参考サイト