高圧ケーブルのシールドアース 片端接地と両端接地の違い

高圧CVケーブル、CVTケーブルのシールドアースの接地方法について解説します。

高圧ケーブルの遮蔽層の接地はシールドアースとかシースアースと呼ばれます。高圧ケーブルのシールドアースは片端接地が基本とされていますが、その理由について解説します。

高圧ケーブルの遮蔽層を接地する目的

  • 遮蔽層の電位がほぼ0Vとなるため、ケーブル表面に触れても安全。
  • ケーブル内の電位分布(電界)が均一となり、安定した運転状態を得られる。
  • ケーブルが絶縁不良によって地絡が発生した場合に、地絡電流を遮蔽層→遮蔽層接地線→大地に流すため。

片端接地

片端接地は以下の図に示すように、片端の遮蔽層にリード線を付けて接地を施し、もう一方の遮蔽層は浮かす(非接地状態とする)やり方です。

高圧引込ケーブルにおいてはシールドアースは基本的に受電盤側で接地され、PAS側では非接地となります。

片端接地の特徴

一般的に行われる片端接地ですが、デメリットとしては非接地側に誘起電圧が発生することです。接地されているので遮蔽層の電圧は0Vだと思うかもしれませんが、実際には非接地側の遮蔽層にはいくらかの電位が発生しています。

導体と遮蔽層の間には相互インダクタンスが存在するので、ケーブル導体を流れる電流によって非接地側には誘起電圧が発生します。この誘起電圧は負荷電流の大きさとケーブルの長さに比例します。ただし、通常の負荷電流くらいであれば問題ないのと、100~200m程度のケーブルなら誘起電圧は非常に小さく問題になることはほとんどありません。ケーブル亘長が長距離となる場合は両端接地が行われることがあります。

遮蔽線の接地線が断線したらどうなる?

シールドアースの接地線が断線したとき、以下の図で示すように遮蔽層には電圧Vが発生します。

\begin{align}
V= \dfrac{C_1}{C_1 + C_2} E \,  \lbrack \mathrm{V} \rbrack
\end{align}

 C_1:絶縁体の静電容量 [F]
 C_2:遮蔽層と大地の間の静電容量 [F]
 E:相電圧 3810 [V]

静電容量の大きさにもよりますが接地線断線時は遮蔽層には数百Vの電圧が発生します。この電圧はケーブルの絶縁劣化や感電の原因になりますので高圧ケーブルのシールドアースは確実に行う必要があります。

両端接地

両端接地は以下の図に示すようにケーブルの両側で遮蔽層を接地するやり方です。

両端接地の特徴

片端接地と比較した際の両端接地のメリットは、前述の誘起電圧を抑制できる点にあります。また、両端接地であれば片方の接地線が仮に外れても片端接地状態となるだけで一応の安全は保たれます。一方で両端接地のデメリットは以下の通りです。

  1. ケーブルの遮蔽層と大地の間でループが構成されるので循環電流が流れる。
  2. G端子接地法で絶縁測定を行う場合はケーブル両端の接地線を外す必要がある。

1つ目の循環電流は (1)発熱によるケーブル絶縁劣化 (2)電力損失 などいろいろと問題を引き起こす可能性があります。循環電流が及ぼす影響を考慮すると原則片端接地とするのが妥当であると考えられます。

2つ目の絶縁測定の話は、例えば引込ケーブルでG端子接地法による絶縁抵抗測定を行う場合、片端接地なら受電盤側のシールドアースを外すだけでよいのですが、両端接地だとPAS側のシールドアースも切り離す作業が必要となります。

両端接地だと地絡電流が分流するのでは?

「遮蔽層の両端が接地されていると地絡電流が両端から大地に流れる、つまり地絡電流が分流するからZCTで精度良く地絡電流を検出できないのでは?」という疑問について考えてみます。

まず、引込ケーブルに関して言えば、引込点にDGR付PASがある場合、PAS内のZCTは高圧ケーブルよりも電源側にあるので、両端接地の分流の影響を受けることはありません。PAS内のZCTを通過する地絡電流の大きさは両端接地でも片端接地でも変わりません。

また、受電盤から高圧電動機やサブ変に送るための送出し用ケーブルでは、接地線の繋ぎ方に注意すれば特に問題はありません。送出し用ケーブルのシールドアースは、以下の図のように接地線をZCTにくぐらせてからアースに接続しなければいけません。

もし接地線をZCTにくぐらせずにアースに繋いだ場合、ケーブルが地絡したときにZCTで検出される電流は (1)電源側から流れてくる地絡電流  I_g と (2)地絡箇所から遮蔽層をつたってアースに流れる  I_{g1} の差分  I_g - I_{g1} となります。上図のように接地線をZCTにくぐらせて  I_{g1} を行きと帰りで相殺させることで地絡電流  I_g のみを検出できます。なお、このZCTに接地線をくぐらせるやり方は片端接地でも同じです。

まとめ

高圧ケーブルの片端接地、両端接地それぞれの特徴について紹介しました。片端接地のデメリットより両端接地とした場合のデメリットのほうが大きいため、現場の施工においてはシールドアースは片端接地が基本とされています。

参考文献

より詳細な解説や具体的な計算例は以下のテキストをご参考ください。誘起電圧と循環電流に関して詳しい解説が記載されています。「高圧受電設備規程」にも高圧ケーブルの接地に関する記載がありますので、そちらも参考になさってください。