火力・バイオマス発電プラントにおけるMFTとボイラーパージについて

火力発電プラントやバイオマス発電プラントなどボイラー発電プラントにおけるMaster fuel trip (MFT)とボイラーパージについて解説します。なお、私自身は火力発電プラントの経験はなく、バイオマス発電プラントの設計経験しかありませんのでその点ご注意ください。

Master fuel trip(主燃料遮断)とは

MFTとは、ボイラー運転中に異常が発生したときボイラーをトリップ=緊急停止させるインターロックのことです。ボイラーをトリップさせるとは燃料の供給を遮断(停止)するという意味です。ボイラーや燃焼空気系統に異常が発生したとき、ボイラー機器保護および安全保護のため、MFTが動作します。燃料とは火力発電プラントなら石炭とか、バイオマス発電プラントなら木質ペレットなどのことを指します。同時にバーナーも停止させます。

MFTロジック図

MFTのインターロックのロジック図の例を以下に示します。左側に記述した条件はあくまで例です。当然プラントの設備構成や設計思想によって変わるので参考程度としてください。

左側のいずれかの異常が発生するとMFTが動作し、ボイラーをトリップさせます。

上記ロジック図はOR回路で記述しましたが、実際のロジックは異常時=接点開としたAND回路で構成します。それぞれのインターロック信号は正常時=接点閉(1)、異常時=接点開(0)とします。異常時=接点開とするのは当然フェイルセーフの観点からです。すべての信号が正常(1)であるときMFTは1=正常で、いずれかの信号が異常(0)になるとMFTは0=トリップ動作となります。

MFTのインターロック回路は原則、通常のプロセス制御を担うDCSとは別で、独立した制御回路で構成する必要があります。DCS異常時にも確実に動作しなければならない非常停止回路と同様の考え方です。インターロック回路はハードのリレー回路や安全計装システム(SIS: Safety Instrumented System)が用いられます。国内プラントでSISを導入してるケースは少ないのが実情と思いますが。。。

MFTインターロック用計器の冗長化要否

MFT用の計装品については冗長化がなされるケースがあります。特にボイラドラムレベル計に関してはボイラー及び圧力容器安全規則(ボイラー則)の「ボイラー等の遠隔制御基準等について」に「ボイラーには、低水位を検出することができる水位検出装置をそれぞれ独立して2個以上設けること。」との文言があり、2台以上の冗長化が義務付けられています。2台設置の場合は、1 out of 2 すなわち2台のうちどちらかが異常検知でボイラートリップとします。レベル計以外の計器については個別に冗長化要否を検討します。ちなみに国内のボイラー則ではレベル計だけ言及していますが、米国のNFPA 85には炉内圧力計を3台設置する文言もあります。欧米の規則は国内以上に厳しい冗長化を要求している場合があるのでそれぞれの規則をよく読む必要があります。

ボイラーパージ

MFTが動作するとバーナーが停止しますが、バーナーを再点火させる場合ボイラーパージ動作が必要になります。

バーナの点火前にボイラーに新鮮な空気を送ってパージすることをボイラーパージと言います。バーナ失火後、未然ガスがボイラー内に残っている状態で再点火すると爆発の危険性があるため、爆発事故を防ぐためにパージを行います。ボイラー則によれば、バーナの点火前はボイラーの燃焼室内および煙道内容積の4倍以上の空気量でパージすることが定められています。パージ完了のフラグは、空気の積算流量によって成立させます。

ボイラートリップ後のバーナー再点火の条件はMFTが動作していないこと(=故障要因が全て正常であること)かつボイラーパージ完了でバーナー起動可とします。

まとめ

火力・バイオマス発電プラントにおけるMFTとボイラーパージについて解説しました。インターロックが適切に設計されていないと爆発事故に繋がりかねないので、以上の内容は発電プラントの制御設計において超重要です。また、インターロックを設計する上ではボイラーに関する規則を知っておく必要があります。

関連規則

国内外のボイラーに関する規則を以下に示します。国内であれば「ボイラー及び圧力容器安全規則」(通称:ボイラー則)、米国であればNFPA 85、欧州であればEN 12952にボイラーのインターロックに関する内容が記載されています。

  • ボイラー及び圧力容器安全規則「ボイラー等の遠隔制御基準等について」
  • NFPA 85: Boiler and Combustion Systems Hazards Code
  • EN 12952: Water-tube boilers and auxiliary installations