2線式温度伝送器とは?メリット、デメリットについて

熱電対や測温抵抗体の信号を4~20mA信号に変換して出力する2線式温度伝送器について紹介します。

2線式温度伝送器とは?

温度伝送器(Temperature trasmitter、温度変換器とも言う)とは熱電対や測温抵抗体の信号を4~20mADCの信号に変換する機器です。温度変換器には、盤内のDINレールに取り付けるレールマウント形と、温度計ヘッド端子部に取り付けるヘッドマウント形の2種類があります。ヘッドマウント形温度伝送器は以下のような製品です。

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ヘッドマウント形温度伝送器は熱電対や測温抵抗体のヘッド端子部に取り付けられます。温度伝送器によって現場から4~20mA信号を出力することができます。通常、熱電対を使用する場合、計器~盤間には補償導線を敷設する必要がありますが、温度伝送器で4~20mA信号に変換することにより、2線式計器と同じように制御用ケーブルを使用できます。高価な補償導線を制御用ケーブルに置き換えられるのが温度伝送器のメリットです。

温度伝送器は欧米では広く使用されています。一方で国内ではほとんど普及していないのが実情と思います。ヘッドマウント形の温度伝送器を国内メーカーで製造しているのはエム・システム技研くらいではないでしょうか。※上の岡崎製作所HPで紹介されている温度伝送器は海外メーカー製。

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メリット

補償導線が不要。通常の制御ケーブルが使用できる

高価な補償導線を使わなくて済むのが温度伝送器の大きなメリットです。大規模なプラントの建設工事の場合は、計装用ケーブルの種類を統一することによって電気計装工事の効率性をアップする狙いもあります。

アナログ入力を4~20mAに統一できる

I/O盤のアナログ入力の種類を統一することによってアナログ入力の汎用性が向上します。温度伝送器付きの温度計を採用することで専用の熱電対入力モジュールや温度変換器は不要になります。

また、例えば既設プラントで熱電対を設置したいが、I/O盤に熱電対入力モジュールや温度変換器がなくて、2線式4~20mAなら予備のAIがある場合。こういうときはヘッドマウント形温度伝送器を使えば配線がシンプルになります。

ノイズに強い

熱電対は微弱なmVの信号であるため配線長が長くなるとノイズの影響を受けやすいです。それに比べて 4~20mADCの信号は長距離伝送に向いています。ちなみに温度伝送器には絶縁型と非絶縁型がありますが、ノイズ対策の観点で絶縁型が推奨です。絶縁型は入力回路(熱電対 or 測温抵抗体)と出力回路(4~20mA回路)が電気的に絶縁されています。

HART通信や自己診断機能が利用できる

上位機種だとHARTやSILに対応した製品もあります。HART非対応の製品はメーカー専用のPCソフトウェアとUSBケーブルで温度伝送器の設定をします。HART対応ならHART用ソフトウェアで設定変更が可能です。

デメリット

本体のコストがかかる

温度伝送器の値段は1台あたり数万円です。補償導線コストを削減できるのは事実ですが、本体代でそれ以上の費用がかかると考えられます。なので温度伝送器は単純にコスト削減を狙って採用するものではないと思ってます。日本で普及が進んでいないのもそういう理由かもしれません。

温度計を交換するときに手間がかかる

例えば熱電対が断線して予備に交換する場合、温度伝送器本体は故障していないので流用します。こういうときは温度伝送器を旧品の熱電対から取り外し、新品の熱電対ヘッド部に取り付ける必要があります。慣れたらなんてことないですが少し面倒ではあります。

壊れやすい?

完全に個人的経験に基づく印象ですが、盤内に取り付けるタイプの温度変換器を比較するとヘッドマウント形は故障が起こりやすい印象があります。この理由としては、現場設置になるのでI/O盤に比べて周囲温度が高い場所や振動がある環境に設置されるケースがあるからと推測します。特に、熱電対で高温プロセスを測定する場合、温度伝送器本体が輻射熱の影響を受けないか?よく考えたほうがよいです。

まとめ

温度計のヘッドに取り付けるタイプの温度伝送器とそのメリット、デメリットについて紹介しました。2線式温度伝送器は利便性向上が期待できる製品ではありますが、採用に際してはその長所・短所およびコストについてよく理解する必要があります。