熱電対の指示値がおかしいときのトラブルシューティング

プラントの試運転あるあるの1つとして「温度計の指示値がおかしい!」というのがあります。熱電対の指示値が疑わしいときの確認項目についてまとめました。温度計が新しいのに正常に測定できない場合は本記事の項目のいずれかが原因になっている可能性が高いです。

配線や機器設定に問題がないか確認する。

簡単にチェックできる内容として、まず配線や設定を確認しましょう。

極性が間違って配線されていないか?

熱電対をプラスとマイナス逆で配線すると、正しく測定が出来ません。ずれているとかではなく明らかに測定値がおかしい場合は熱電対の極性が反対に繋がっているケースが多いです。

熱電対端子部と計器室で極性が逆になっている、つまり、補償導線だけが反対に繋がっている場合は補償導線にかかっている温度差の分、負の起電力が発生します。

熱電対の種類に合った補償導線が使用されているか?

例1:種類の異なる補償導線が使用されている。

K熱電対なのにR熱電対用の補償導線が使われているなど、種類の異なる補償導線を使った場合は正しく測定が出来ません。プラントの中で複数の種類の熱電対を使用していると補償導線の間違いが極稀に発生します。

例2:普通の制御ケーブルが使用されている。

普通の銅導体の制御ケーブルが使われているケース。計測器と熱電対端子部の温度差の分の熱起電力がゼロとなるのでその分だけ指示値が低く表示されます。

補償導線の配線が逆になっていたり銅導線を使用したら温度の測定値は以下の図のようになります。

補償導線が高温環境下で使用されていないか?

例えば150℃とか200℃以上の高温環境で補償導線が使用されていると測定誤差の要因になります。周囲温度がめちゃくちゃ高い環境では特に注意が必要です。補償導線は通常、熱電対と同等の熱起電力特性を持ちますが、使用温度範囲外で使うと誤差が生じます。誤差の大きさについては以下のリンクを参照ください。補償導線の最大温度は一般用で最大90℃、耐熱用で最大150℃ですので条件に合わせて適した補償導線を使うようにしましょう。

www.twire.co.jp

熱電対の入力モジュールや信号変換器の設定が間違っていないか?

例えばK熱電対なのにR熱電対で設定されているなど。また、4-20mAに変換する信号変換器を使用している場合は測定レンジの設定が間違っている場合があります。ヘッドマウント形の2線式温度伝送器を使っているケースで温度伝送器だけを取り替えた場合は、使用前に温度計種類や測定レンジを設定する必要があります。予備の温度伝送器を使うときなどは要チェックです。

熱電対の設置環境に問題がないか確認する。

以上が配線や設定に関するチェック項目でした。配線や設定に問題ないことが確認できたら次は熱電対の設置環境をチェックします。

熱電対の起電力が測定できるデジタルマルチメータを持っている場合は、熱電対の端子部に接続して温度を測定してみましょう。デジタルマルチメータの指示値がDCS上の指示値と合っていたら、そもそも温度の測り方に問題があると考えられます。

挿入長は適切か?

熱電対の挿入が短すぎると低めに温度指示が出ます。熱電対の保護管挿入長さの目安は以下の通りです。(株式会社岡崎製作所の取扱説明書より引用)

  • 液体:保護管径の5倍以上
  • 気体:保護管径の10倍以上
  • 炉内温度測定:保護管径の10~15倍以上

上記はあくまで目安であり、指示値が低いときは挿入長さが十分でない可能性が考えられます。設置場所を見直すようにしましょう。配管径の都合で挿入長さが確保できなければ、斜めに挿入するとかエルボー部に挿入するなどして対策します。

炉内の温度測定の挿入長さに関してはノウハウの話になってきます。短すぎると正常に測定できないし、あまり長すぎるとコストアップ要因になったり高温ガスの影響で寿命が短くなったりします。

測定対象の温度分布に偏りはないか?

例えばタンク内部の液体の温度分布が均一ではなく、温度の低い部分を測ってしまっているケースなど。機器の図面を確認し、温度計の設置箇所が適切な場所にあるか確認します。

熱電対本体を疑う。

熱電対本体(素線)に何か異常はないか?

いろいろ確認してどこにも異常がないとなると、最後の最後に熱電対本体を疑います。国内の温度計メーカーの熱電対であれば品質に問題があることはまずないですが、ググってもホームページが出てこないような謎の海外メーカーとかだと要注意です。

まとめ

以上が熱電対のトラブルシューティングでした。上記の要点を理解していれば、何かトラブルが起こっても迅速に解決できるようになるかと思います。また、熱電対の温度計測については以下のリンク先のページが参考になります。

参考サイト