「インバータ過負荷」と「モータ過負荷」の違い

インバータの過負荷保護機能にはインバータ過負荷モータ過負荷の2種類があることはご存知でしょうか。それぞれの役割について解説します。

例えば三菱のインバータではE.THT(インバータ過負荷遮断)とE.THM(モータ過負荷遮断)の2種類があります。その2つの役割・目的は下記の通りです。

インバータ過負荷:インバータの過熱・焼損を防ぐ。
モータ過負荷:モータ巻線の過熱・焼損を防ぐ。

インバータ過負荷とは

三菱電機のインバータを初期設定で使用する場合、インバータ定格電流×150%で60秒、定格電流×200%で3秒の過負荷耐量を持っています。これを超える電流が流れると「インバータ過負荷」でトリップします。

当たり前ですが容量の大きいインバータなら大きい電流を許容できます。小さいインバータでは小さい電流しか流せません。許容電流以上の電流が流れるとインバータ保護のためトリップします。これがインバータ過負荷の意味です。モータ容量に対して適切なインバータ容量を選定しないと、例えば小さいインバータを選定してしまうと、インバータ過負荷が発生し運転ができません。

インバータ過負荷発生時の対策
  • 加速時間を伸ばす。
  • トルクブーストの設定を見直す。
  • インバータの容量を大きくする。

インバータの設定を変えても解決しない場合は、実際の負荷特性に合ったインバータが選定されていない可能性があります。インバータの定格の選定については過去の記事を参照ください。

electrical-instrumentation.com

モータ過負荷とは

インバータのパラメータ設定ではモータ定格電流を設定できるようになっています。設定された電子サーマルによってモータ過負荷時に保護動作が働きます。これがモータ過負荷の意味です。

また、過負荷だけでなく低速度運転時にモータ巻線が過熱した場合にも電子サーマルでトリップが働きます。インバータで低い周波数でモータを運転した場合、自冷ファンの回転数も落ちるためモータ冷却能力が低下します。したがってインバータのモータ保護機能の過負荷特性は出力周波数によって変化します。一般的に周波数が低いほど許容できる負荷電流は小さくなります=トリップしやすくなります。

モータ過負荷発生時の対策
  • 負荷を軽くする。過負荷運転を避ける。
  • 低速度の運転を見直す。あるいは他力通風形モータに変更する。
  • モータの容量を大きくする。インバータもそれに合わせて変更する。

モータ過負荷の場合はインバータ側ではなくモータ側(負荷側)に何かしらの問題があります。

特に低い周波数で運転する負荷だと、通常の全閉外扇形モータでは冷却能力低下の懸念があります。この場合、他力通風形モータを採用する対策が取られます。

まとめ

以上の内容を整理すると以下の通りです。

インバータの許容電流以上の電流が流れたとき
→ インバータ過負荷でトリップする。
モータ過負荷運転や低速度運転でモータ巻線が過熱したとき
→ モータ過負荷でトリップする。

インバータ過負荷かモータ過負荷か、どちらなのかによって取るべき対策が変わります。