インバータの軽負荷定格とは?

インバータの軽負荷定格の意味について解説します。

軽負荷定格(LD定格)とは

軽負荷とは一般的にファンやポンプなどの2乗低減トルク特性の負荷のことを指します。一方でクレーンや搬送機器は重負荷という扱いになります。結論を言うと軽負荷定格で使うならモータ容量よりワンランク下のインバータを選定できます。逆に言うと、インバータ容量よりワンランク上のモータを運転できます。

三菱電機のAシリーズでは超軽負荷(SLD)、軽負荷(LD)、標準負荷(ND)、重負荷(HD)の定格種類があります。三菱電機のFR-A800シリーズの選定例を以下に示します。

定格別インバータ選定例(引用:三菱電機株式会社:FREQROL NEWS 2014年2月 Vol.39

例えば15kWポンプのインバータを選定する場合、LD定格で使うならワンランク下の11kWのインバータを選定できます。ワンランク下のインバータを選定することでコストダウンやサイズダウンを図ることができます。

LD定格やND定格とは何ぞやという話ですが、これはインバータの過負荷保護の特性のことです。三菱電機では、LD定格だと過負荷保護は定格電流120%, 60sの反減時特性で、ND定格だと定格電流150%, 60sの反減時特性になります。すなわち、LD定格では過負荷運転に対してよりシビアな設定となります。過負荷運転をしない負荷であればLD定格とし、上の選定表の通りワンランク小さいインバータを選定できるということです。

2乗低減トルク特性のポンプやファンは負荷(電流値)の増減が緩やかで、かつ低速領域では負荷が小さいため、軽負荷とみなしLD定格でインバータを選定することができます。さらに過負荷耐量を小さくしても運転可能であるなら超軽負荷定格も適用できます。反対にクレーンや搬送機器、破砕機など電流値の増減が激しい負荷で、インバータに過負荷耐量を持たせる場合は重負荷とみなしND定格もしくはHD定格でインバータを選定します。

負荷定格の設定はインバータのパラメータ設定で変更します。

インバータの負荷定格

インバーターメーカー各社の各負荷定格の過負荷耐量を以下の通りまとめてみました。メーカーによって表記が若干異なります。同じメーカーでも機種によっていろいろ種類があるので詳細はカタログをご確認ください。

三菱電機 (FR-A800)

重負荷(HD):200% 60s、250% 3s
標準負荷(ND):150% 60s、200% 3s
軽負荷(LD):120% 60s、150% 3s
超軽負荷(SLD):110% 60s、120% 3s

FR-F800はLD, SLDの2種類、FR-E800はND, LDの2種類のみです。

日立産機システム(SJシリーズ P1)

標準負荷(ND):150% 60s、200% 3s
軽負荷(LD):120% 60s、150% 3s
超軽負荷(VLD):110% 60s、120% 3s

富士電機(FRENIC-MEGA G2)

重負荷(HHD):150% 60s、200% 3s
軽負荷(HND):120% 60s

注意点

インバータ選定時の注意点を以下に記載します。インバータ選定においては負荷の特性を十分に理解しておく必要があります。

  • DCリアクトルはインバータ容量ではなくモータ容量で選定します。
  • 全てのポンプやファンが軽負荷定格で運転できるわけではありません。例えば定トルク特性である場合、過負荷耐量の小さいLD定格では加減速時に過電流を拾ってトリップする可能性があります。この場合は標準負荷もしくは重負荷としてインバータを選定しなければなりません。

参考サイト