以前、低圧ケーブルサイズの選定方法 について説明しましたが、今回は高圧ケーブルの選定方法について解説します。
高圧ケーブルサイズの選定条件
高圧ケーブルサイズの選定においては以下の2つの条件を両方満たさなければなりません。
- ケーブルの短絡時許容電流が短絡電流よりも大きい値であること。
- ケーブルの常時許容電流が最大負荷電流よりも大きい値であること。
両者の必要断面積を検討し、大きいほうを採用します。
短絡時許容電流
短絡時短絡電流の簡易計算式
CVケーブル、CVTケーブルの短絡時許容電流 は以下の式で表されます。
\begin{align}
I = 134 \dfrac{A}{\sqrt{t}}
\end{align}
導体断面積 のケーブルが持続時間 の短絡に耐えうる許容電流 を示します。
上記の計算式はCVケーブル(架橋ポリエチレン),短絡前導体温度:90℃,短絡時許容温度:230℃における簡易式です。ケーブル種類が異なる場合は134の値が変わります。「短絡前導体温度90℃」の意味は、短絡前に常時許容電流100%の電流が流れていたと仮定した場合、という意味です。もし負荷率が低くて短絡前の導体温度がもっと低い場合、例えば50℃とか60℃のとき理屈上は、より大きな短絡電流を許容できます。ただし通常は90℃の上記の式で検討します。
短絡持続時間 には短絡発生時の遮断完了時間を代入します。遮断完了時間とは、短絡が発生してからOCR(過電流継電器)の瞬時要素が動作し、遮断器での遮断が完了するまでの時間です。t の値が大きいほど許容できる電流値は小さくなります。引込ケーブルの場合は配電用変電所のOCR動作時間と遮断器の遮断時間の合計値です。負荷側の高圧ケーブルの場合は需要設備側のOCRと遮断器の時間になります。仮に配電用変電所のOCRの動作時間を0.2s、遮断器の遮断時間を5サイクル(50Hz)とすると遮断完了時間は0.3sとなります。 としたときの38sqと60sqの計算例を以下に示します。
CVTケーブル38sqの短絡時許容電流
\begin{align}
I = 134 \dfrac{38}{\sqrt{0.3}} = 9297 \ \lbrack \textrm{A} \rbrack \fallingdotseq 9.3 \ \lbrack \textrm{kA} \rbrack
\end{align}
CVTケーブル60sqの短絡時許容電流
\begin{align}
I = 134 \dfrac{60}{\sqrt{0.3}} = 14679 \ \lbrack \textrm{A} \rbrack \fallingdotseq 14.7 \ \lbrack \textrm{kA} \rbrack
\end{align}
当該ケーブルが短絡したときの短絡電流を求めて、それを満たす直近上位のケーブルサイズを選定します。
常時許容電流
常時許容電流については最大負荷電流を考慮してケーブルサイズを選定します。引込ケーブルの場合は契約電力の電流値を計算してそれを満足するケーブルサイズを選定します。需要設備側では変圧器や高圧電動機の定格電流を考慮してケーブルサイズを選定します。
ケーブルの常時許容電流は周囲温度や布設方式によって変わります。周囲温度25℃で管路式の場合、6600V-CVT 38sqでは155A、60sqでは200Aです。詳細はケーブルの仕様書をご確認ください。
まとめ
以上、高圧ケーブルのサイズ選定について解説しました。繰り返しになりますが、高圧ケーブルにおいては短絡時許容電流と常時許容電流の両面で検討を行い、両者を満足するケーブルサイズを選定する必要があります。検討に用いる諸条件は実際の条件によります。