折れ線関数による調節弁の線形化

調節弁で流量制御を行う場合、調節弁の非線形特性を補正し制御性を向上させるために折れ線関数による線形化が用いられます。その手法について解説します。

調節弁の非線形性について

調節弁の開度-流量の特性(有効流量特性)は以下の要因によって決まります。

  • 圧力源(ポンプ等)の流量-圧力特性
  • 流量による配管の圧力損失
  • 調節弁の固有流量特性

調節弁の特性としてはイコールパーセント特性やリニア特性などがあり、使用環境によって適切な調節弁を選定しますが、必ずしも開度と流量は線形な関係になるとは限りません。

例えば調節弁の弁開度-流量特性が以下のようなものだったとします。

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調節弁の開度-流量特性の例

上の場合は、バルブの開度が小さい部分では弁の開度に対する流量の変化が小さく、開度が大きい部分では流量の変化が大きくなります。言い換えると、開度と流量の関係が非線形であり、調節弁の開度の大きさによってプロセスゲインが変わるということです。制御にとっては操作量(コントローラの出力)と制御量(PV)の関係は線形であることが望ましいです。非線形であることは制御性、安定性においてあまりよろしくありません。

そこで制御特性を線形化するために、DCSの折れ線関数機能を使用します。

折れ線による線形化

折れ線による線形化のイメージは以下のようなものです。

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折れ線による線形化

非線形特性(中央のグラフ)を打ち消すような折れ線関数(左のグラフ)を制御系に組み込むことで、操作量(コントローラの出力)と制御対象である流量を線形な関係にすることが出来ます。制御ループを以下に示します。

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折れ線関数を用いた制御ループ

折れ線関数による線形化の手順

折れ線関数の導入手順は下記の通りです。

調節弁の開度・流量特性を取得する。

最初に調節弁の開度-流量特性を取得する必要があります。まず、コントローラをAutoからManualにして調節弁の各開度における流量を測定します。バルブ開度を手動で変更していって定常状態の流量計の指示値を記録します。ここでは流量もパーセントで表すことがポイントです。開度が0%のときは流量0%としておきましょう。開度をX軸、流量をY軸としてプロットしたものが以下のグラフです。データの点数は4~5点程度あれば十分かと思います。

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調節弁の開度-流量特性

もし開度と流量が線形な関係であれば特に問題ないのですが、非線形の場合は折れ線による補正が必要となります。

折れ線関数を作成し、DCSに設定する。

上のグラフで、X軸とY軸を入れ替えたものが折れ線のデータとなります(X=100、Y=100を1点追加しました)。これをDCSに設定します。

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折れ線グラフ

1つ目のグラフと2つ目のグラフを組み合わせることで、コントローラの出力(操作量)と流量が線形な関係になります。例えば下記のように操作量と流量が1:1になってることがわかります。

操作量25%=開度50%=流量25%
操作量50%=開度75%=流量50%
操作量75%=開度90%=流量75%

PIDパラメータを再設定する。

折れ線を使うことで制御の特性が変わるため、PIDのゲインを再度調整する必要があります。折れ線関数を設定したあと、あるいは折れ線の設定値を変更したあとはPIDパラメータを適切な値に調整しましょう。

まとめ

  • 調節弁の開度と流量の関係は必ずしも線形にはならない。
  • 調節弁の非線形特性を補正するために折れ線関数を使用する。
  • 調節弁の開度-流量特性を取得し、折れ線データを作成する。