圧力伝送器や差圧伝送器のゼロ調整とスパン調整について解説します。
ゼロ調整、スパン調整の目的
ゼロ、スパン調整はセンサーの入出力特性を校正する作業です。ゼロとは測定レンジの下限値(0%)のこと、スパンとは測定レンジの上限値と下限値の差、つまりレンジの大きさのことです。
圧力伝送器は工場出荷時、正しくゼロ・スパンが設定されていますが、プラントで長い間計器を使用していると経年劣化によって直線が少しずつずれていきます。ずれた直線を正しい状態にする(校正する)作業がゼロ調整とスパン調整です。ちなみにセンサーの入出力特性は完全に直線ではないのですが、今回はわかりやすく直線と表現します。
例を以下に示します。
圧力伝送器の入力信号は圧力です。出力信号は4~20mAです。本来ならば測定レンジ0%の圧力のとき4.00 mA、100%の圧力のとき20.00 mAになるのが正しい状態です。赤の実線がその状態です。しかし、経年劣化によりこの直線の場所が少しずつずれていきます。例えば上図における青の破線は本来の状態からズレた状態です。 このズレを直すのがゼロ調整とスパン調整です。
ゼロ調整
ゼロ調整とは入出力直線を平行移動させてゼロ点を合わせる作業です。例を以下に示します。
ゼロ調整を行うことでゼロ点でのズレをなくすことができます。ただし、ゼロ点での誤差はなくなりましたが直線の傾きが本来の状態からずれている場合、誤差は残ったままです。圧力0%=4mAになりましたが、圧力100%=20mAにはなっていません。
スパン調整
スパン調整では入出力直線の傾きを調整します。
スパン調整はゼロ調整のあとに行います。ゼロ調整でゼロ点を合わせたあと、スパン調整で100%のところを合わせます。0%と100%の2点で調整を行うので2点校正とも言います。スパン調整を行うためには実際に加圧状態にしなくてはならないので圧力キャリブレータと加圧ポンプが必要です。道具を用意できない場合はゼロ調整だけしか出来ませんが、それはあくまで簡易的な調整であり校正とは言えるものではありません。
圧力伝送器の校正手順
圧力伝送器の校正には圧力キャリブレータと加圧ポンプを用意します。校正手順は以下の通りです。
- 圧力ゼロ状態を作る。(大気開放。差圧伝送器なら均圧弁を開く)
- ゼロ調整を実行する。
- 加圧ポンプで圧力100%の状態を作る。
- スパン調整を実行する。
校正に際しては校正前のデータと校正後のデータを記録します。校正前の誤差がどのくらいだったのか、校正後に誤差がどの程度になったのかを記録します。
まとめ
圧力伝送器の校正について解説しました。ゼロ調整とスパン調整の話は圧力伝送器に限らず、他の変換器も同様の考え方です。プラントの保全において圧力伝送器のゼロ点調整はよく行われますが、直線の傾きがずれている場合、ゼロ点調整をやっただけでは測定誤差は残ったままです。校正するという意味ではスパン調整も実施する必要があります。ただし、バルブ操作だけで簡単に出来るゼロ点調整とは違って、スパン調整は専用の器具が必要となり作業も煩雑なものになります。実際のところスパン調整を含めた計器の校正作業は専門の業者に依頼するケースが多いです。