電験2種二次試験問題から保護協調を理解する

自家用受変電設備の保護協調の考え方について、電験2種二次試験の過去問を自分なりに解いて理解してみます。

電験2種 二次試験 電力・管理(平成12年 問6 (3))

図に示す自家用変電所の過電流保護について,保護協調の観点から次の問に答えよ.

一般電気事業者から過電流継電器Ry1の限時整定値を変圧器二次側回路の短絡時に0.6秒以下とするよう要請されている場合,保護協調における適正動作時間を考慮し,過電流継電器Ry2,Ry3の動作時間整定値(限時整定値)を求め,かつ,瞬時要素付きの要否について述べよ.

ただし,遮断器の全遮断時間は0.1秒,過電流継電器は誘導円盤形で,その慣性動作時間および最短動作時間整定値は各0.2秒,余裕時間は0.05秒とする.

自分の解答

過電流継電器Ry1の整定値

問題文より、電力会社(一般電気事業者)から「Ry1の限時整定値を0.6秒以内」とするように要請されているため、Ry1整定値は最大でも0.6秒として考える。これを超えることはNGです。※実際の保護協調の検討においても電力会社との協調の条件は絶対に守る。

また、下位OCRがある場合の上位OCRの動作時間は以下の関係を満足する必要がある。

上位OCRの動作時間=下位OCRの動作時間+下位CBの遮断時間+慣性動作時間+余裕時間

問題文より、CBの遮断時間は0.1秒、慣性動作時間は0.2秒、余裕時間は0.05秒とされているので、

上位OCRの動作時間=下位OCRの動作時間+0.35秒

となる。Ry2の動作時間に0.35秒を足した時間がRy1の動作時間整定値になる。逆に考えれば、Ry1の動作時間を仮に0.6秒に決めると、Ry2の動作時間整定値は0.25秒となる。

慣性動作時間について

慣性動作時間とは何か?その前に、そもそも継電器の慣性とは何か?

継電器の慣性特性とは、動作時間内で継電器の通電が中断(=事故電流が消滅)した場合でも慣性により継電器が動作しうる特性のこと。例えば昔使われていた誘導円盤形リレーだと事故電流が動作時間内に消滅しても円盤が急に止まらず動作してしまう。なので慣性特性の余裕を見て動作時間を決めましょうという話。ちなみに、JIS4602には慣性特性試験の通電時間は以下のように規定されている。

誘導形:動作時間の60%、静止形:動作時間の90%

これの意味するところは「通電時間が動作時間(整定値)の60 or 90%以内であれば不動作」という意味。例えば静止形OCRなら85%の時間なら動作することはないが、動作時間整定値の95%で事故電流が消滅した場合は慣性によって継電器が動作する可能性があるというイメージ。なので静止形OCRを使うなら慣性特性を考慮して1割の余裕を見ておかないといけない、ということ。誘導形であれば4割の余裕を見ないといけない。この1割とか4割の時間のことを慣性動作時間という。問題文では、この時間を0.2秒としている。

過電流継電器Ry2、Ry3の整定値

Ry2の動作時間整定値は上の述べた通り、仮で0.25秒としておく。

次にRy3であるが、上で述べた通り上位と下位のOCRの時間差は0.35秒あけなければならない。しかし、Ry2:0.25秒だとどうやっても無理。なので、Ry3は瞬時要素付きとする。この意図としては、CB3(Ry3)のフィーダで短絡事故が発生したときはRy2より先にRy3を瞬時で動作させたいという考え。(限時要素整定値は最短の0.2秒とする。)

瞬時要素の動作時間は問題文には書いていませんが、JIS4602には瞬時要素の動作時間は0.05秒以下であることが定められています。最長の0.05秒で考えてRy2の整定値は0.4秒とする。

Ry2整定値=0.05秒+CB遮断時間0.1秒+慣性動作時間0.2秒+余裕時間0.05秒=0.4秒

Ry2を0.4秒にすると上位OCRであるRy1の0.6秒との協調が満足できないが、そこはもう他に方法がないので仕方がない。Ry1(CB1)とRy2(CB2)が同時にトリップする事象は許容することとする。

もし、Ry1とRy2の協調を優先させたいのであればRy1:0.6秒、Ry2:0.25秒、Ry3:0.2秒(瞬時要素付き)となる。この場合、Ry2とRy3の限時要素における協調は取れない。どこを優先で考えるか、ここらへんは設計思想次第になるかと。。。

ちなみに、不動先生の電験二種完全攻略の解答によれば「6.6kV母線の事故は稀頻度であるので、最悪Ry1とRy2の直列トリップを許容する。」とのこと。

ちなみに瞬時要素はRy3にだけ付ける。Ry2にも瞬時要素を付けると、短絡時に同じタイミングでRy2とRy3が両方動作してRy3に瞬時要素を付けた意味がなくなってしまうため。

OCR整定値まとめ

  • Ry1:0.6秒
  • Ry2:0.4秒
  • Ry3:0.2秒(瞬時要素付き)

OCRの動作を図にすると以下のようになります。Ry3の動作時間は瞬時要素を示しています。

まとめ

保護協調の設計におけるポイントを下記にまとめます。

1. OCRの保護協調は継電器の動作時間だけを比較すればいいわけではない。CBの遮断時間と継電器の慣性動作時間を考慮する必要がある。

2. 誘導円盤形継電器は慣性特性が大きいので、慣性動作時間(動作時間の4割)の分の余裕を見ないといけない。静止形は慣性特性が小さく精度が高い。

ちなみに誘導形OCRは既に生産中止になっていて今は静止形OCRが広く普及しています。静止形は慣性動作時間が短いので、今回の条件だと静止形OCRを使えばRy1、Ry2、Ry3すべてにおいて協調が取れますね。